Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

谷口 建人

インド

予想不可能な国インドでの半年

谷口 建人さん

理学部 物理科学科 
留学期間:2016年7月~2017年5月
留学先:インド工科大学マドラス校

留学便り(2016年12月・留学5ヵ月目)

生活面、学習面、旅行の3つの視点から私のインドでの半年を振り返ろうと思います。

 まずは生活面についてです。インド工科大学はチェンナイの真ん中に位置しており、非常に広いキャンパス内はジャングルの様に緑で覆われています。チェンナイ自体は都市部なのでめったに森を見ることはないのですが、インド工科大学マドラス校は緑の保全を大学の方針としているらしく、都市部の真ん中に残された数少ないジャングルの中に大学を無理やり置いたような面白い形になっています。基本的に学生はキャンパス内にあるホステルに住むことになっており、私が住むことになったのは留学生と修士以上の学生専用のホステルでした。このため、最初にできた友達はインド人ではなく他の国からの留学生で、幸運なことに僕と同じく物理学が好きなフランス人が僕の部屋の向かいにいたので、友達が出来るのに長い時間はかかりませんでした。驚きだったのがドイツ人の多さです。インド工科大学の設立にドイツが一枚嚙んでいたというがあり、留学生全体の半分以上がドイツから来ていました。その数の多さは私のインド人の友達が「ここはインドじゃなくてドイツみたいだな」と言っていたほどです。こういったこともあり、インド人の友達と過ごす時間よりも、最初の方は他の留学生と過ごす時間の方が長くなってしましました。幸運にも私が唯一の日本人留学生だったので、日本人で集まってしまうという現象は起きず、中国、フランス、スウェーデン、ドイツから来た留学生達4人とグループになっていつも行動していました。彼らと過ごした時間は楽しくはあったのですが、留学生でグループを作ってしまったためにインドに触れる機会が減ってしまったため、今となっては反省しています。

 次に学習面についてです。授業体系は工科大というのもあって日本と変わらず講師の方が生徒の前で黒板を使い授業を進行するというものでした。しかし、いくつかの授業では実験と理論の授業の統合を目指している方がいたりして、理論で習ったことを次の週には実際に実験して確かめるという形式の授業があったりもしました。インドに来る前はインド工科大学はインドで最も入るのが難しい大学だと聞いていたため、きっと授業の勉強ばかりしている真面目な学生ばかりいるのだろうと思っていましたが、実際は自分でプロジェクト、例えば、宇宙線の検出器を自作してそれを風船に付けて飛ばし、宇宙線を観測するといったことや、ドローンの自作等をしている学生が数多くいました。中には、まだ学部生なのに既に起業を果たして成功している学生もいました。また、キャンパス内にはワークショップという施設があり、実験などに必要な機材や材料はそこで入手が可能なので、興味を持ったことをとことん進んでいける環境が出来上がっているように感じました。理系の学生にとってはうれしいことですね。私は授業で手いっぱいでとてもプロジェクトをすることは考えることもできなかったですが、次のセメスターでは宇宙線のプロジェクトに誘われたので、可能なら参加してい見たいと思っています。

 最後に旅行についてです。インドでは物価が非常に安いため、他の国と比べて旅行代が非常に安くすみます。地域に寄りますが、友達と旅行した時は大体600ルピーあればwifi付の部屋へ一泊することが出来ました。1ルピーが大体1.5円ですので日本円では大体900円ほどですね。食事も大体60円あれば十分おなか一杯食べられました。こういうこともあり、最初のセメスター中に様々なところへ旅行をしました。一番記憶に残っているのは、先ほど上で述べたグループにチェコ共和国からきた留学生と彼の彼女を加えたグループでヒマラヤ山脈をトレッキングした時のことです。標高4600メートルの世界は無音に包まれていて、まるで宇宙に来ているような感覚になりました。最初のセメスターが終わった後は、皆でインド最南端の場所へ向かい3つの海が出会う点を見ました。そのあとは西海岸に沿って北上し、ハウスボート(湖の上で浮かんでいる船。そこで一泊しました。)に乗り、ケラーラではガイドになってくれた私の友達の家に、皆でお邪魔したりしました。結構な田舎だっため、外国人が訪れるのは初めてだったらしく、大勢の人に温かく迎えていただきました。面白かったのは晩御飯で一緒に行った留学生の友達が「そろそろお腹いっぱいかな」といった時に、その家の主人が「No No No」と言いながら大量の食べ物をその友達の皿に追加し始めたことですね。いろんなおもてなしの方法があるんだなと感じました。

 この半年でたくさんのことが起きました。水をめぐってチェンナイとバンガロール間で暴動が起きたり、インド政府が突然高額紙幣の使用を停止したせいでそれまで使われてきた紙幣が紙くずになったり、チェンナイ首相が亡くなったことによって外出禁止令が発令されチェンナイに入れなくなったり、サイクロンが直撃したせいでキャンパス中の木々が倒れ、食料や電気の供給が数日間ストップしたりもしました。ですが、こういった予測できなかった負の事柄に加えて、いろんな国からの留学生と友達になれたり、それまでずっと疑問だった物理や数学の事柄が解決したりという正の事柄も起きました。何より物理についてたくさん話をすることが出来る友達が出来たことが一番よかったなと思います。負の事柄も今となっては笑い話なので、一概に悪い思い出とは言えませんが。多すぎてここに経験した事を全て書ききれないことが残念ですが、今回の報告はここまでで終わりとします。